五〇番目の待合室

世の中は少子化だと、新聞もテレビも言う。

数字で見れば、たしかにそうなのだろう。

けれど、親になってから見る景色は少し違う。

どこへ行っても、子どもがいる。

ベビーカーが並び、泣き声が重なり、親たちは皆、少しだけ疲れた顔をしている。

統計には出てこない熱量が、そこかしこにある。

その代表格が、小児科だ。

予防接種に定期健診。

少し長引く鼻水でも、気になって足を運ぶ。

親になると、病院は思った以上に身近になる。

受付で番号札を渡される。

「……五〇番目です」

一瞬、聞き間違いかと思った。

待合室には、すでに四九組の親子がいるらしい。

泣く子、走る子、それを追う親。

全員がそれぞれの事情を抱えて、ここに座っている。

壁のテレビでは『トムとジェリー』が流れている。

言葉がいらないのがありがたい。

だが二周目に入ったあたりで、こちらの集中力も怪しくなる。

昔はどうしていたのだろう。

WEB予約もなく、今より子どもが多かったはずだ。

当時の親たちは、この待ち時間をどうやってやり過ごしていたのか。

ようやく診察を終えて外に出ると、どっと疲れが出る。

こちらのほうが診てもらいたい気分だ。

ふと、自分が通う内科の待合室を思い出す。

あちらはあちらで、年配の人たちで溢れている。

子どもが集まる小児科と、

年を重ねた人が集まる内科。

「少子高齢化」という言葉の両端を、

一日で見せられたような気がした。

腕の中で眠るわが子を抱えながら、

なぜか私は、日本の縮図を持ち帰っているような気分になっていた。