今年一番の寒波がやってくる。
テレビの中では、気象予報士が心なしかテンション高めに
「記録的な」とか「数年に一度の」なんて言葉を並べている。
なぜあんなに嬉しそうに見えるんだろう。
……そう思うのは、私だけだろうか。
とにかく、本格的な冬がやってきた。
「今日は寒いから、お家でゆっくりしようね」
そんな大人の、至極まっとうな提案なんて、彼には通用しない。
窓の外を指さして
「お外に行こう!」と必死にアピールする息子。
今日はやめておこう、風邪をひく。
躊躇する私と、靴を掴んで離さない息子。
結局、根負けしたのは私の方だった。
よし、わかった。行こう。
重い腰を上げ、自分のコートを羽織る。
息子にはモコモコのダウンを着せ、帽子も深く被らせて、準備万端。
息子はこれから始まる「お出かけ」への期待を隠せない様子で、足取りも軽い。
「よし、行こうか」
覚悟を決めて、玄関のドアを開ける。
ビューーーッ。
暴力的なまでの風と、容赦ない冷気が、二人の顔を叩く。
その瞬間、息子の表情が一変した。
さっきまでの輝きはどこへやら。
瞳には「……聞いていた話と違う」という戸惑いだけが浮かんでいる。
……三分後。
私たちは、暖房の効いたリビングにいた。
玄関には、脱ぎ捨てられたばかりの小さな靴が二足。
温かいお茶を飲みながら、ふと思う。
どれだけ言葉で「寒いからやめなさい」と説得するよりも、
一瞬の北風の方がよほど教育的だったな、と。
テレビからは、
「明日は、さらに冷え込みます!」
と気象予報士の意気込んだ声が聞こえてくる。
気づけば、私のテンションも、こころなしか上がっていた。


