わたしのパーカーの紐は、
いつも湿っている。
決して、
わたしがだらしなく濡らしているわけではない。
犯人は、もちろん息子だ。
抱っこをすると、
ちょうど紐が目の前にぶら下がる。
それをつかんで、
口に入れて、
噛んで、
なめる。
どうやら、
それが彼なりの楽しみ方らしい。
最初のころは、
「やめて」と言って
何度も紐を引き戻した。
濡れるし、
見た目もよくない。
それなりに、抵抗もした。
でも、
その攻防も長くは続かなかった。
今では、
抱っこする前から
少しだけ前に垂らしている。
抵抗というより、
もう受け入れている。
考えてみれば、
口がさみしくて
タバコに手が伸びる、
あのお父さんたちの感覚と
似ているのかもしれない。
そして、
多くのお父さんたちが
いつの間にか
タバコを手放したように、
息子も、
そのうち
この紐を必要としなくなるのだろう。
そう思うと、
それはそれで
少しさみしい。
今日も、
わたしの胸元で
静かに湿っている。


