泣くのも、悪くない

「テレビはおしまいね」と妻が言った。

その瞬間、息子が泣き出した。

うえーん、と全力。

顔はくしゃくしゃ、目から鼻まで大洪水。

思い通りにいかなかっただけで、あんなに泣けるなんてすごい。

大人になると、そういう理由じゃもう泣けなくなる。

いや、泣かないようにしてきたのかもしれない。

「泣いてもダメだよ」と言いながら、その素直さが少しうらやましく思えた。

私にも、「まだ見たい」と言いたかったことが何度もあった。

でも、言う前に我慢するほうを覚えていった。

涙をこらえるのが上手になるほど、うれしいときの笑い方も少しぎこちなくなった気がする。

息子はまだ、自分の気持ちにまっすぐだ。

泣いて、ぶつけて、また笑って。

そのくり返しを見ていると、正しさよりも「まっすぐさ」のほうが大事なのかもしれないと思う。

泣き止んだ息子の顔に、涙のあとが光っていた。

思わず、私もひとつ息をこぼす。

泣くのも、悪くない。