
「抱っこ」。
これほど短くて、強い言葉はなかなかない。
少しずつ単語が出てきたな、と思っていたら、
いつの間にか覚えていたらしい。
こちらの事情や体力など、お構いなしに、
真正面から飛んでくる。
最初の頃は、
言われるたびに嬉しくて、
こちらも張り切って抱き上げていた。
待ってました、と言わんばかりに。
ただ、
回数は確実に増えていく。
朝も、昼も、夜も。
立ち上がるたびに、
小さな声で、あるいは確信に満ちた声で、
「抱っこ」。
正直に言えば、
最初ほどのテンションではなくなっている。
腰も、腕も、
それなりに現実を訴えてくる。
それでも、
「今はちょっと……」と
見送れる言葉ではない。
いつまで抱っこできるのか、
それはわからない。
ある日、ふと、
もう必要なくなるのかもしれない。
過保護だと思われるかもしれない。
甘やかしすぎだと言われるかもしれない。
それでも、
求められるうちは、
抱っこはしようと思う。
抱き上げたときの重さは、
成長の証で、
同時に、
期限付きでもある気がしている。
今日もまた、
その一言に、
私は立ち上がる。


