「ミカン?」のある1日

息子のミカンへの執着がすごい。

朝、まだ顔も洗わぬうちに「ミカン?」と聞く。

昼、カレーを食べ終えて「ミカン?」

夜、風呂上がりに「ミカン?」と言う。

箱買いしたのをいいことに、すっかり日課になった。

小さな指で器用に皮をむき、白い筋まできれいに取る。

その集中力に感心して見ていると、

自分と妻のところにも、ひと粒ずつ転がしてくれる。

それが妙にうれしい。

誰に教えられたわけでもないのに、ちゃんと分ける。

寝言でも「ミカン……」とつぶやく。

夢の中でも食べているらしい。

先日、スーパーへ行ったときのこと。

カートの子ども席に座っていたはずの息子が、

ミカン売り場の前で突然立ち上がった。

そのままミカンの山めがけて小走り。

慌てて追いかけながらも、あの引力には正直少し笑ってしまった。

「また今度ね」と言いながら手をつなぐと、

その手のぬくもりがほんのり甘い香りをしていた。