親の最初の仕事

名前をどう決めるか。

世間には流行りがあるようで、今の時代を象徴するような華やかな漢字が並んでいる。

試しにネットのランキングとやらを覗いてみたが、なるほど、これがいわゆる「令和」か、と思う。

きっと、学校で目立つ子たちは、こんな名前をしているのだろう。

そんな根拠のない想像をしながら、どちらかといえば堅実そうな名前で育った自分の中に、子どものころに抱いていた、あの謎の嫉妬が蘇ってくる。

まずは、思いつくままに書き出してみる。

だが困ったことに、字を書くたびに誰かの顔が脳裏をかすめる。

いい奴だったか、嫌な奴だったかは関係ない。

私にとって、まっさらな印象の名前にしたいのだ。

次に、苗字との兼ね合い。

音の響き、字面の落ち着き。

何度も口の中で転がしてみる。

そこに妻の「画数」というこだわりが加わると、事態は一気に複雑さを増す。

私が「これだ」と思った名も、画数の凶という一言で、無惨に消されていく。

一、二、三……。

指を折りながら画数を数え、何度も紙を書き直す。

一通り書き出したはずの紙は、今や線で消された跡ばかりだ。

真っ白になった頭で、また最初の一文字を睨みつける。

親としての、最初の仕事。

思っていた以上に、腰の据わる作業だった。

気に入ってくれるかどうかは、ずっと先にならないと分からない。

せめて今は、

一生懸命考えた、という事実だけが、

この子への手土産だと思うことにした。