正義の味方は、出世した

アンパンマンとの付き合い方は、

子どもが生まれてから、だいぶ変わった。

正直に言うと、

自分から積極的に好きだった記憶はない。

テレビの中に、いつもいる存在。

それくらいの距離感だった。

ところが、子どもが生まれると状況が一変する。

病院の待合室。

おもちゃ売り場。

外食先。

どこに行っても、アンパンマンがいる。

泣いたとき、困ったとき、

場をつなぐ役割として、

アンパンマンは迷いなく差し出される。

「ほら、アンパンマンだよ」

それだけで空気が少し和らぐ。

一歳半健診では、

アンパンマンの絵を指さして

「どれかな?」と聞かれる。

いつの間にか、

好きであることが前提の世界に

足を踏み入れていた。

私が子どもの頃にもアンパンマンはいた。

けれど、ここまでではなかった気がする。

ヒーローというより、

今はもうインフラに近い。

愛と平和を、

ごく自然に配って回っている。

出世したな、と素直に思う。

誰に命じられたわけでもなく、

静かに、確実に。

私も今では、

アンパンマンに頼る側だ。

完全に任せるわけではないけれど、

否定もしない。

うまく付き合う、

という言葉がいちばん近い。

今日もまた、

どこかでアンパンマンに助けられている。