ミルクの場所

もう、ミルクは卒業している。

夜中に起きて飲ませることもないし、

哺乳瓶を洗うこともなくなった。

それでも、息子にとって

スギ薬局は「ミルクの場所」らしい。

オムツや日用品を買いに行くだけなのに、

看板を見つけると、指をさして

「ミルク」と教えてくる。

行きつけの店だけではない。

車で走っていて、

たまたま見かけたスギ薬局にも反応する。

緑の看板。

あの色と形は、

もう完全にインプットされている。

CMが流れると、

「ミルク」と言って少し興奮する。

レジ袋やチラシを見つけては、

どこからか引っ張り出してくる。

不思議だ。

もう飲んでいないのに、

まだそこにある。

きっと、

息子の中では

「ミルク=スギ薬局」だった時間が、

ちゃんと残っているのだと思う。

いつか、

あの看板を見ても

何も言わなくなる日が来る。

スギ薬局は、

スギ薬局になる。 

それが楽しみでもあり、

もしかしたら、

少しさみしいのかもしれない。